2012年8月14日火曜日

♪NO.3♪ 本から学ぶ

久野塾のビジョンは、「30代の塾生が高いレベルでIQとEQを持ち、社会の様々な分野で一級の人材として活躍すること」であります・・・その理由を極めて的確に説明してくれているのが、冨山和彦さんの「30代が覇権を握る!日本経済」(PHPビジネス新書)です
                http://www.amazon.co.jp/gp/product/4569804985/(Amazonより)

また、丁度、本日、8月14日の日経新聞朝刊の一面にシリーズで「シニアが拓く」が始まりました。「終活で築く最期の安心」ビジネスが大きな成長をみせているということ。

「高齢化はピンチではなくチャンスである」
「約700万人の団塊の世代が65歳以上に加わり、シニアの存在感は一段と高まる」
「先細る現役世代に代わり、シニアが日本を活気づける」 (以上出典8/14日経新聞)

と書かれています。

確かに、元気なシニア層はビジネスの視点からすれば大きな顧客層で、ストックを持ちながら十分な年金を制度的に受給できる「優遇された余裕のある世代」ですので、「シニア向けビジネス」で日本のGDPを下支えするという企業の狙いは理にかなっています。これから10年間の内需拡大に寄与するでしょう。

しかしながら、冨山さんの著書「30代が覇権を・・」は、将来の日本を託すべき20代、30代の世代が疲弊している社会は、安定社会につながらないという警告を発している点に共感できます。日本経済の閉そく感は総論としては皆が理解しているところですが、実は、今の日本には大きな世代間格差があり、それは正に所得格差となって、経済の閉そく感を生み出しているというものです。1500兆円にものぼる個人金融資産の三分の二を60代以上が占有するという事実です。

この点は、意外に盲点かもしれません。メデイアでも若者向けに解説されている機会も少ないのかもしれませんが、優位に立つ世代が中心の日本の社会では、積極的にPRされない事情もあるのでしょう。私自身も、感覚的には想像できてはいたものの、本を読むまでは、臨場感・危機感は、さほど感じてはいませんでした。

企業のグローバル化の加速とか、円高による打撃とか、消費税アップは常にクローズアップされていますが、年金や医療問題は、30代の若者の関心を呼び込むには、「遠い将来」の話なのかもしれません。ただ、現行制度が続けば、必ずや制度破壊は生じ、不幸が現実化してしまうのは確実であるのに、まさに茹でガエル状態なのかもしれません。

更に、「30代が覇権を・・」では、日本社会が内包する「税と社会保障の問題も、財政悪化の問題も、規制改革を阻んできた既得権構造の問題も、若年層失業の問題も、問題の根を掘り下げていくと、最後はこの世代間の収奪構造の問題に行き着く」(同著から抜粋)と続きます。

*同著に掲載されているデータの一例(出典同著)

1.公的年金の1人当たりの受益と負担の差額 P.83参照(+が純益)
今の60歳以上は、公的年金に払った額よりももらう金額が多い。
一方、今の30代は500万円、20代は700万円のマイナスとなる。
  1950年生まれ(62歳) +502万円
  1955年生まれ(57歳) +  0万円(ブレイクイーブン)
  1970年生まれ(42歳) -523万円
  1980年生まれ(32歳) -656万円

2.年金・医療・介護全体における生涯純受給率 P.84参照
社会保障全体でみると、今の60歳以上はペイするが、それ以下の世代は一貫して負担増。
30代で10%ほどのマイナス。
 
 
  1950年生まれ(62歳) +1。0%
  1955年生まれ(57歳) -3.1%
  1970年生まれ(42歳) -7.8%
  1980年生まれ(32歳) -9.8%

今後ますます30代以下の世代にのしかかる60代以上の世代の「重み」に耐えていくという構造は、若者のモチベーションを低下させ、あきらめ感、悲壮感を助長させるに相違ありません。なぜならば、どう彼ら彼女らが頑張ったところで、所得格差の構造的問題が変わらない限り、明るい未来は来ないという現実が大きくのしかかっているからに他なりません。

私が、この本を読み、今感じているのは、それぞれの世代が将来の日本のためにどう行動すべきかということです。以下、あくまでも私見です。

60代以上:
「得する世代」として、自分自身の終活ばかりを心配するのではなく、既得権益に執着しないで自分たちの3世代後の日本を考えて所得移転を実現する制度転換を積極的に受け入れる行動をしていただきたい。

50代:
私の世代です。「ブレークイーブン世代」として、「得する世代」と「損する世代」を間をブリッジし、所得移転を実現する世論を高め、実務的にも、構造改革へのリーダーシップを取る。定年まで何とか失敗なく・・・という弱気な発想でなく、ブリッジが自分たちの世代のミッションと考えて率先する。

40代:
一番難しい世代かも知れません。組織でも、最も上下の狭間で苦労している。50代と30代の繋ぎ役を演じる重要なポジショニング。50代は「ブレークイーブン」なので、危機感は薄い。50代が構造改革のリーダーシップを取れないときに、主役を演じる準備をしておく。

30代:
今のままでは大きく「損する世代」である、という認識をしっかりと持ち、自分たちの世代が覇権を握るためのIQとEQを高める(つまり、理論で上の世代負けないことと、上の世代と上手く関係の質を築くということ)。選挙にも必ず参加して、所得移転を推進する政党・政治家をサポートする。そして、何よりも、将来の日本を背負って立つという大きなミッションとビジョンを持つ。

20代:
国や企業が面倒をみてくれなくても生活できるという「自立の策」を考えて、行動する。狭い就活願望や企業への依存意識を捨て、自立してinnovativeな発想を展開する。

さて、皆さんは、この課題をどう考え、どのように行動されますか? (了)


2012年8月7日火曜日

♪NO.2♪ 久野塾

先週の土曜日に第四回久野塾を開催しました。
 
塾生6名、オブザーバー4名、アドバイザー2名と私含めて13名。今回のテーマは、「仕事におけるマーケティングの実践発表」でした。第三回で学んだ「真のマーケティング」を塾生が自らの仕事の中でどのように活かしているかの発表です。

一人の発表時間は20分で、塾生、オブザーバーからの質問のシャワーとアドバイスを沢山浴びます。最後に、二人のアドバイザーと私からの思いやりのある鋭い質問とコメントが・・・・(笑)
 こんな感じで久野塾は朝の9時半からスタートし、進んでいきます。マーケテイング理論をどのように自分の日常の仕事に使うのかは、決して簡単ではありません。理論と実践の間には大きなギャップがあり、そこには、リーダーシップやマネジメントの課題が多く介在するためです。

 また、後半は、アドバイザーの一人である池淵吉彦さん(外資系会長職)の講義でした。この2時間の時間は、スペシャルゲストタイムとして、第二回では、英治出版の原田社長、第三回では、プロント元社長本名様に登壇いただき、講師の方の豊富な経験を通して、塾生に熱いメッセージを投げていただける、まさに、「贅沢な時間」です。池淵さんからは、「これからの知識創造経営ーマーケティング実践知とあるべきリーダーシップの話をしよう」というテーマで、自らの失敗体験、成功体験を交えながら語っていただき、塾生に多くの刺激を与えていただきました。
 
最後に、塾生一人一人からの今日の振り返りと学んだことを各自ホワイトボードへ書きながら語ってもらいました。
  • Mission
  • 常に半歩先
  • Passion
  • 気づき
  • 書を捨てよ、街に出よ
  • 戦略
  • 眠れないほど考えよ
  • 利他

東京の恵比寿の小さなラボで、熱い教室が開催されたことは大海に小さな石を投じることにすぎませんが、久野塾の様なさまざまな勉強会グループの小さな改革の波紋がいずれ大きな影響を30代の若者に与え、30代が日本の社会の中心的存在として活躍し、10年後の日本の危機に、必ずや「救世主」となってくれることを願い、これからも支援していきたいと思います。 (了)