ブータン見聞について、3回シリーズでブログをお届けします。今回は初回です。
11月12日から同友クラブ(経済同友会会員および会員経験者による研鑽・交流の場)主催によるブータン・ネパール視察旅行に参加してきました。参加者は総勢32名。ブータンは、昨年11月に第5代ワンチュク国王夫妻の来日、東北被災地訪問、国会演説などで、一躍「幸福の国」として有名になりました。ほとんどの日本人が国王夫妻の来日を機に、「知らない国」から「誰もが知ってる国」に180度変わったのではないでしょうか?事実、私にとっても、「興味のない国」から「一番行ってみたい国」に変わりました。
ブータン国旗Wikipediaより |
偶然か必然かわかりませんが、今年の1月に独立して、エグゼクテイブ・コーチとしてスタートしたこともあり、8月に同友クラブへの再入会(2007年に経済同友会に入会した際に同友クラブにも入会したのですが、1年で脱会していました)を決め、一般教養を勉強する機会に触れようとしていた矢先に、視察旅行先がブータン・ネパールと聞き、即決で申し込みをしました。
ブータンへは成田からタイのバンコク経由のルートが最速、しかもフライトの関係でバンコクに一泊する必要があります。バンコクからはドゥルック航空(ブータン国営)でバングラデッシュのダッカ経由で4時間かかりました。ブータンへは外国機の乗り入れは禁止。ドゥルック航空のみが就航しています。140人乗り4機、40人乗り4機保有で、外国の航空会社との提携はありません(したがって、マイルの提携もなし)。バンコクーパロ(ブータン唯一の国際空港)間のAir ticket代は、成田ーバンコクよりも高いと聞き、驚きでした!また、ブータン国内の旅行は、外国人観光客には一日180ドルの課金がされますから、ホテル代に加えて、結構な負担となります。年間観光客が4万人(内、日本人はアメリカ人に次いで多く4千人~5千人)で、観光施設、ホテルのキャパの関係もあり、人数制限をしている政策をとっているとのことです。
(久野撮影@パロ空港) |
(久野撮影@機内) |
(久野撮影@機内) |
パロ国際空港に到着してまず我々を出迎えてくれたのが国王夫妻(の大きな写真看板)でした。国王夫妻自ら先頭に立って国の観光事業のおもてなし役を買っている姿勢に感動しました。最高のおもてなしセンスですね。タラップから降りてブータンの地に足を踏み入れた瞬間に目に飛び込んできた「幸福なシーン」です。
(久野撮影@パロ空港) |
今回の視察では、ジグミィ・Y・ティンレ首相(写真上)とHome & Cultural Affairs省ミンジュル・ドルジィ大臣(写真下)と別個に会談する機会に恵まれました。これも同友会パワーだと、あらためて感激した次第ですが、これらの会談は各1時間行われ、ブータンの国家政策と国民総幸福Gross National Happinessについて直接お聞きすることができました。
首相会談(久野撮影@首相官邸) |
大臣会談(久野撮影@王宮) |
国家の4つの柱:
1.経済的自立(2020年までに完了)
2.環境保護
3.文化の推進
4.良き統治
GNHの9つの尺度:
1.精神面の幸福
2.健康面での幸福
3.教育の充実
4.文化の多様性
5.地域の活力
6.環境の多様性と活力
7.Work & Life バランス
8.生活水準・所得
9.良き統治
さて、ブータン見聞ブログの第1回目の締めくくりとして、首相・大臣から伺った第5代ワンチュク国王とそのお父様である第4代国王のサーバントリーダーのエピソードを紹介しましょう。
上記の国家ビジョンやGNHの導入は第4代国王がされたそうです。17才という世界最年少の君主として就任した国王は、GNHを国是として、GNPではなく国民の幸せを最優先に国造りを進めました。教育・医療制度などを充実させ、伝統、文化や自然環境を尊重しながらも、インフラ整備を推進しました。驚いたことに、国王自ら、国会に対して国王の罷免権を付与したほか、絶対王政から立憲君主制へ移行をさせたことです。君主自らが移行させた例は世界の中でも稀なケースです。
2006年に自ら退位して現在の第5代ワンチュク国王に譲位し、2008年に議会制民主主義による政府を選ぶための総選挙を実施。同年、すでに王位を継承していた第5代国王の戴冠式が王宮にて行われました。譲位後の第4代国王の生活は質素で、自宅は丸太小屋、カーペットは穴が開いていて、自家用車は十数年ものという話でした。また、現国王も、通勤は王宮近くの住居から徒歩通勤。住居は王妃と二人暮らしなので2LDKとのこと。自ら、襟を正す生活をされているそうです。
王宮中庭(久野撮影) |
第4代国王
|
第5代国王 Wikipediaより |
Throughout my reign I will never rule you as a King. I will protect you
as a parent, care for you as a brother and serve you as a son. I shall give you
everything and keep nothing; I shall live such a life as a good
human being that you may find it worthy to serve as an example for your
children; I have no personal goals other than
to fulfill your hopes and aspirations. I shall always serve you, day and night,
in the spirit of kindness, justice and equality. As the king of a Buddhist
nation, my duty is not only to ensure your happiness today but to create the
fertile ground from which you may gain the fruits of spiritual pursuit and
attain good Karma.
(日本語 久野訳)
私は、私が主権を握ってから最初から最後まで”王”として皆さんを支配することはありません。私は、あなたたちを実の親のように守り、あなたたちを兄弟のように手助けし、さらに息子のように尽くします。私はあなたたちにすべてを与え、何一つ制約しません。私は、あなたたちの子供たちの手本となるような立派な人間であるように生きます。私は、あなたたちの願いや望みを叶えること以外は何一つ目指していません。私は親切心、正義感、そして公平さのもとに日夜を問わずあなたたちに尽くします。一仏教国の王として、あなたたちの今現在の幸せを確かにするだけでなく、あなたたちが精神面での果実や良きカルマを達成できるように、豊かな国土を築くことが私の使命です。
子供たちの「手本」となるというくだりはジーンときますね。国王である前に人として手本となることを目指すという姿勢は、まさに、奉仕型リーダーシップであるサーバントリーダーです。国王自らが国民の幸福のためのサーバントを目指すというコミットメントを示して国家を統治していく姿は、我々ビジネスリーダーにとっても必須のリーダーシップスタイルだと改めて痛感した次第です。GNHを目指すブータンで、その原点を見聞できたことは、とても有意義な旅でしたし、その考え方は、私のビジネスコーチングのスタイルと共通するところでしたので、一層、感銘を受けました。
次回Vol.2では、ブータンの国民の豊かで品格のある国民性・生活ぶりについて書いてみます。お楽しみに!(つづく)
子供たちの「手本」となるというくだりはジーンときますね。国王である前に人として手本となることを目指すという姿勢は、まさに、奉仕型リーダーシップであるサーバントリーダーです。国王自らが国民の幸福のためのサーバントを目指すというコミットメントを示して国家を統治していく姿は、我々ビジネスリーダーにとっても必須のリーダーシップスタイルだと改めて痛感した次第です。GNHを目指すブータンで、その原点を見聞できたことは、とても有意義な旅でしたし、その考え方は、私のビジネスコーチングのスタイルと共通するところでしたので、一層、感銘を受けました。
次回Vol.2では、ブータンの国民の豊かで品格のある国民性・生活ぶりについて書いてみます。お楽しみに!(つづく)