第五の選択:独立、エグゼクティブコーチへ
2011年の7月にビジネスコーチ社主催の「コーチの神様マーシャル・ゴールドスミス氏直伝コーチングスクール」が東京で開催されるとの情報を聞き、私は30万円の2日間コースに即決で申し込んだ。これも何かの縁だったのであろうか、本来、私に直接来た話ではなく、たまたま私の知り合いの方にきたセミナー案内であったが、その方が参加できないとのことで、私にその案内が回ってきたのであった。まさに「神のお導き」だったのかもしれない。前に書いた様に、2007年にマーシャル氏の「できる人の法則」に出会って以来、なんと4年ぶりでしかもご本人から直々にコーチングの手ほどきを受けることが出来るチャンスが、その後、私の独立を大きく後押ししてくれることになる。
マーシャル氏のスクールを修了し、同社のビジネスコーチスクール6回コースに即座に申し込んだ。6講までの内、既に第2講が終了していたため、第6講からの入校という変則であったが、同社の細川馨社長の計らいで途中参加させていただくことになった。細川社長自ら講師をされていたご縁で親しくなり、その後の2011年末までの数か月間は、まさに独立に向けてのエグゼクティブコーチ修行といえる日々が続き、2012年1月に晴れて独立の一歩を踏み出したのである。このご縁で、現在、同社とパートナーシップを結び、ビジネスコーチングの普及に協業している毎日である。まったく不思議な縁である。
「エグゼクティブコーチとは何か?」の話に戻すと、一言でいえば、企業の幹部である社長、役員、部長クラスの専属のプロの家庭教師という感じだ。「企業のエリートに家庭教師が必要なの?」と不思議に思われる人もいると思うが、“イエス”である。事実、幹部には、日々、直面して処理していかねばならない課題が次から次へと湧き出てきて、しかも、それらを同時並行的且つスピーディーに解決していくことが求められる。反面、少しでも対応を間違ったり、売上利益の未達成で責任を取らされたり、部下との関係では、言い方を間違えるとパワハラに発展したりして、毎日、相当なプレッシャーの中で格闘しているのである。
その一方で、これらの企業幹部は、組織の中で徐々に「裸の王様」へと変貌していく。私が事業部長から社長時代の初期にそうであった様に・・・。部下には見えていて幹部には見えない領域(思考の枠)があり、それが組織の関係の質を悪化させている。思い上がり、思い込み、自分が正しいという固定観念、部下は自分の思い通りに動くという我儘、更に、それまで成しえた成功体験。それが原因となって、組織の変化へのチャレンジも減退し、イノベーション力も衰退して、その結果、企業の競争力は低下していく。それは、まさに現在の日本企業が、韓国や中国のパワーにおされている背景には、このような関係の悪化を改善できない根本的な要因があるような気がしてならない。
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Wikipediaより |
この様に毎日苦悩の連続の中で頑張っている企業幹部に後方支援をし、彼ら彼女らが更に成功を続けていくためのお手伝い役が、エグゼクティブコーチである。一対一の対面で毎回60~90分程度、12回で約6か月間の長い二人三脚での旅が始まる。回数を重ねることで、行動変革の習慣化・定着化を高め、成果に導く。
コーチングをスタートする前に、幹部の部下同僚・上司から360度ヒアリングという調査をコーチが対面インタビューで行う。「思考の枠」に気付かせ、幹部が自らの意思で変わる努力を継続することで、部下がそれに感動を受け、部下が変わりはじめ、組織が変わるメカニズムである。オセロゲームと同じで、鍵となるポジションを黒から白に変えることで瞬く間に多くのコインが白に変わっていく様と同じである。ただ、なかなか幹部自身が自らを黒から白へ裏返すことは困難であるので、ここにコーチのサポートの必要性がある。
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Wikipediaより |
一人の企業幹部が行動変革することでその組織が変わる、つまり、私がコーチとして千人のクライアントの行動変革のサポートをし、その行動が変わることで、一万人、いや十万人、もしかしたら百万人の組織が変わり、成果を上げることが出来るかもしれない。自分一人で百万人を相手に研修講師はできないけれども、千人であれば、10~15年で達成できそうだ。私のコーチとしてのミッションは、「日本人ビジネスパーソンを元気にして、日本再生に貢献する」である。百万人が元気になれば、貢献できたと言えるだろう。それを実現するためにも独立してスタート時点でつまずくことは許されない。何としても成功しなければ、という強い想いで、独立後の最初の90日間に「4つの実践」を試みた。(つづく)